廃墟で現代アート@フランスとドイツのはざま

Bonjour, こんにちは


今日は1週間ほど前になるのですが、ストラスブールで開催されていた現代アートイベントL'Ososphèreに行ってきたので、レポしたいと思います!



まずはその概要から。

1997年にストラスブールで生まれたL'Ososphère、当初はNuis éléctroniques de L'Osospère(エレクトロ・ナイツとでも訳しましょうか)として音楽を中心とした二日間のイベントでしたが、2000年代中頃から様々な場所を会場として数日間にわたるエレクトロ、電子機器を使ったアートイベントとして拡大していきました。その根底には「都市における芸術」の姿とは、というテーマがあり、ストラスブールという街の新たな姿を創造、発見しようという意気込みが感じられます。

今回は、当初から続いているエレクトロミュージックのライブNuits éléctroniquesはもちろん、現代アートの展覧会、様々なワークショップ、カフェなど様々な要素から成ります。

今回の会場はCoopの元本部(日本のコープとは関係ありません。1902年にストラスブールで作られた物流の共同組合。フランス語ではコーペ。アントニーは日本を旅行した際、COOPの看板を発見し「うわ、同じやー!!」と感動したらしい)。1911年にPort du Rhin地区にコープの本部が置かれましたが、次第にワイン貯蔵庫、精肉店、倉庫など様々な目的のための建物が付け足されていく。コープ自体はこの場所の15%しか使用していなかったそう。しかし、1988年頃には次第にこの場所は使われなくなり、90年代には現在のような廃墟に。


ちなみに会場があるPort de Rhin地区 は本当にストラスブールとドイツの間に位置しています、がなにか商業施設があるわけでもなく、私は今まで足を踏み入れたことはありませんでした。ところが、行ってみるとストラスブール中心部とは雰囲気の違う町並みが待っていました。いかにも工業地帯といった感じのいかつい工場、石炭採掘で栄えたリールなどの北部の街を思わせるレンガ造りのアパートなど。さらに今は使われていない線路も。



私たちが見たのは、コープの元本部の建物で行われていた展覧会。1階から3階まで、だだっ広い無機質な空間に様々な作品が展示されていました。その中でも私目線で面白かったものをいくつか紹介します。

まずは、Daniel DepoutotのGolgotha。キリストが磔刑に処せられた丘がタイトルのこの作品は、板金を様々に接合させたインスタレーション。金属板がゆらゆら動いたり、回転したり、窓から入る光に反射してきらきら輝きます。その圧倒的な大きさも手伝って、観るものを立ち止まらせる作品です。天井からの水のしたたりは演出なのか、そのままの状態なのか、非日常へと誘ってくれます。


続いて、ハイテク技術を使った、けれどとても詩的な作品、Pauline DelwaulleのTerra Incognita。大きな白い画面に映し出されるのは、「悲しみの湖」、「白い岬」、「越えられない峠」など実際の山や湖など地形を暗示する無数の名前と、大陸と湖の輪郭線。例えば、アメリカ大陸にある「悲しみの湖」を指でクリックすると、この作品は私たちを、その名前に関係のある(ときには全く関係のない)別の場所に連れて行ってくれる。世界をいつもと違った角度から旅することができる。

最後にAurélien Vernhes-LermusiauxのL'Empire ( Détroit ).この作品はまさにCoopという会場にうってつけ。暗闇の中、大きな画面に映し出されたのはデトロイトの廃墟となった街。画面の前に立つ私たちの影が白い人影となって、廃墟の建物のなかに紛れ込む。まるで廃墟を探検する人影を遠くから観察するような不思議な感覚。いつのまにか、冷たいはずの無機質な建物に親しみが湧いてくる。



どの作品にも説明をしてくれる人がいて、その人たちの説明を聞いて「なるほどね~」なんて言いながら実際に体験してみたり、「え、なにこれ、どうなってんの?」なんて言いながら二人であーだこーだ考えてみたり、やっぱり現代アートの面白さは観者が主人公になって発見したり体験できることにあるなあと思いました。

来ているお客さんたちも若者から、子供をつれた家族連れ、いかついお兄さん二人組、はたまたおじいちゃん一人だったり。


1024 ArchitectureのTESSERAT aka HYPER Cube はリラクシングチェアに座りながら、エレクトロ音楽に合わせて動く光のショーを鑑賞する。黒布で覆われたまさに小宇宙のなか、リズムにあわせて光が交差する。ふと、隣をみると夢中になっているアントニーと、リズムにのるおじいちゃん。


全部で30以上の作品が展示されており、夕方から閉館の8時まで居続けてしまった!

このイベントを日本でもやるとしたら、福島出身の私としては飯坂温泉の旅館、ホテルなどの廃墟を使って現代アートイベントをやってみたい。面白いんじゃないかなあ、安全の問題はありますが。


このイベントは4月29日から5月7日まで。来年もあるはずなので、チャンスがあればぜひ行ってみてください!


Deep@Stras

大聖堂で有名なフランスの東のはじっこ、ストラスブールで暮らす兼業フリーランサーのブログ。日々の暮らしのこと、フランス生活で役立つことなどを発信していきます。

0コメント

  • 1000 / 1000